開催日:2017年9月4日 通算222回  /  参加者:8名


研究者:S・Iさん
自己病名 :未定
研究テーマ:「なってしまう現象」について
 


 

<苦労の内容>

●Iさんは25歳で精神科病院に入院し、約35年間の入院生活を経て最近グループホームに入居された男性の方です。徐々にグループホームに馴染んできてエエ感じなのですが、Iさん曰く「なってしまう現象」で苦労しているとのこと。

 

 

<「なってしまう現象」って何ですか?>

●・・・ということで、Iさんの言う「なってしまう現象」について語ってもらうところからミーティングが始まりました。Iさんによると「なってしまう現象」は入院していた頃から存在し、長年の悩みだった様です。それがグループホームに入居した今も続いている。参加メンバーからの「具体的には、どんな現象ですか?」との質問に対して、Iさんはミーティングに慣れない緊張した口調で一生懸命に説明しました。

●その内容を要約すると、こんな感じになります。病棟でもグループホームでも、場所に関係なく苦手な人(Iさんにとって恐いと感じる人)と出会う。そうすると、その人の前に出た時に「イヤラシイ顔の感じ」と「恥ずかしい体の動き」(Iさんの表現)に”なってしまう”。その自分の不自然さが相手の人に伝わり「こいつ何をオドオドしとんねん!」と相手を怒らせる。その怒りによってIさんは、より一層「イヤラシイ顔の感じ」と「恥ずかしい体の動き」に”なってしまう”・・・こうして悪循環にはまり込み、ついに身動きできない状態に陥る。

 

 

<「なってしまう現象」の苦労のサイクル>

●つまり、図のような苦労のサイクルがIさんの話の中から見えてきました。

 

 

<これまでの自分の助け方>

●でも尋ねてみると対処法もいろいろと持っておられました。

 ①モーツァルトを聴く

 ②美人さんに逢いに行く(通院先の吉田病院の総合受付の女性職員さん)

 ③美しい建物で過ごす(グループホームの自室は「美しい建物」らしい)

 ④TVに熱中する・・・

なるほど、なるほど・・・モーツァルトとか美人さんとか、なかなか内容がエレガントです。さすが入院生活35年のベテランです。でもIさん曰く「これだけでは足りない場合がある」とのこと。

 

 

<新しい自分の助け方>

●ではどうするか?・・・参加メンバーから「思い切って恐い人に話しかけて『なってしまう現象』を説明すればどうですか?」という提案が出ました。Iさんは少々ビビリながら「スタッフさんが横についてくれるなら」と同意されました。早速いつものように予行演習に入りました。(業界用語でSST)「怖い人」役の人を前に、応援役のスタッフを横にして、練習してみました。Iさんはとても緊張しながらも「わざわざお話を聞いてくれてありがとうございます」「僕は身体の動作が恥ずかしい状態になって不安になります」「よろしくお願いします」と「怖い人」役に話し掛けました。・・・Iさんは当事者研究に参加して、入院生活でつかんだ”緊張から身を守る4つの方法”に加えて、”怖い人と対話..する”あるいは”自分の苦労について他の人達と対話..する”という新しい自分の助け方のスタートラインに立たれた様です。そんなIさんの予行演習の姿を見て、 参加メンバー全員が拍手を送りました。

●Iさん、参加者の皆さん、貴重な体験発表ありがとうございました。Iさんの「なってしまう現象」との付き合いは今後どうなって行くのでしょうか?研究は続きます。