開催日:2017年4月3日 通算212回  /  参加者:8名


研究者:Mさん 

自己病名:統合失調症、ドーパミン幻覚劇場・苦労タイプ

研究テーマ:生活保護とドーパミン幻覚劇場


 

<苦労の内容>

●最近「しんどい」「うつ」の状態が続いている。普段は「きたまちクリニック」のデイケアに通っているが、今は「引きこもっていたい」「薬を吞んで眠っていたい」という気持ちが強い。だから、睡眠改善薬のドリエルという市販の薬を多量につかってしまうこともある…とのこと。

 

 

<「しんどい」背景に何があるの?

●…ということで、「しんどさ」の背景に何があるのかをMさんに語ってもらうところからスタートしました。Mさんによると「デイケアのメンバーとの話が弾まない」ことと「働かずに生活保護を受けているという負い目」が関係しており、さらに、この二つは微妙に結びついているらしい。Mさんは50代の男性で、主治医からは「無理して働く事を考えなくてもよい」と言われていて、自分でも「どう頑張っても、働いて生活保護を『卒業』するのは無理だし、今の状況は仕方ないヤン」と思っている。でも、スッキリいかない、何かがある……。

 

 

<ドーパミン幻覚劇場と入院>

●年末にもこんな事があったと、入院のエピソードが語られました。いつものように「薬を飲んで眠っていたい」という欲求に逆らえず、薬を吞みすぎた結果、量が足りなくなり、薬を吞まない日が続いた。

●するとMさん命名の「ドーパミン幻覚劇場」の幕が開いてしまった。(解説:ドーパミンとは幻覚妄想状態に関係すると言われている神経伝達物質のことです)部屋に突然、「明石家さんまさん」、「ビートたけしさん」、「ダウンタウンさん」が現れ、Mさんを取り囲み、口々に「生活保護を受けているわりには物が多いの~」「こいつ、ラクしてるわ!」「働けるのに働いとらん」と責め立てたらしい。Mさんは身体を堅くしてガタガタと震えていた。・・・するとそこへテレビの生放送のカメラを引き連れて「竹内 力さん」が右手にマイクを持ち、左手をズボンのポケットに突っ込み、肩をゆすりながら玄関まで迫ってきた。「コラ。M。銭返せや!!」。このままだと、吊るしあげられる姿が全国に放送されてしまう。さらに最悪なことに、Mさんが若い頃に大ファンだった往年のアイドル「大場久美子さん」がその様子をテレビ局のモニターで観ている……「も、もうあかん」…と思った時に、きたまちクリニックの看護師長さんが家に来て「Mくん大丈夫か?病院にいこう」と優しく声をかけてくれて、ドーパミン幻覚劇場から救出してくれた。

 

 

<ドーパミン幻覚劇場・再現、そしてM主任さん召喚(しょうかん)作戦>

●「こんな場合、どうしたらいいの」とMさん。それではと、いつものようにロールプレイを行いました。「さんまさん」「たけしさん」「ダウンタウンさん」の配役を決めて、幻覚劇場を再現してみると、まさに、周囲を敵に包囲されて逃げ場のない感じです。あるメンバーさんから「味方は出てこないの?」という問いかけがありました。すると、Mさんから「そう言えば、いつも慰めてもらっている、きたまちデイケアのM主任さん(女性)がいます」とのこと。それなら、M主任さんを幻覚劇場に招いて、味方になってもらおうという話になり、もう一度ロールプレイが行われました。新たにM主任さんの配役を決めて、「今のままで大丈夫よ」と言ってもらいました。Mさんの感想は「なごみます。かなり効果ありそうです。生活保護バッシングのドーパミン劇場が始まったらM主任さんを招きます」とのことでした。参加したメンバーさんから、口々に「自分もM主任さんみたいな人、欲しいな~」という感想が語られて、この日の研究が終わりました。

●Mさん、参加者のみなさん、貴重な体験発表ありがとうございました。Mさんの「生活保護バッシング・ドーパミン幻覚劇場」との付き合いは今後どうなっていくのでしょうか?研究は続きます。